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はじめに

我が国の平均寿命は、男性79歳、女性86歳(2006年厚労省)で、日本は世界一の長寿の国です。現在の75歳以上の人口は10人に1人ですが、2030年には5人に1人、2055年には4人に1人になるといわれています。高齢者の増加やまた介護期間の長期化という状況と、一方社会的には核家族化が進み介護する家族の高齢化(老老介護)という家族をめぐる状況も変化してきました。介護を社会全体で支え合う仕組みとして介護保険制度があります。今回は高齢者を取り巻く福祉という観点から、介護保険制度を知り、介護予防について考えてみましょう。

介護保険制度とは

介護保険制度は40歳以上の国民が納める保険料と税金で運営されており、その運営主体(保険者)は市町村です。サービスを受けられるのは、65歳以上の寝たきりや認知症などの方と40~64歳で特定疾病により介護が必要と認められた方です。


サービスを利用するときは

介護などが必要な高齢者がいらっしゃるときは、市町村に要介護認定の申請をします。
寝たきりや認知症などの要介護状態、または、要支援状態にあるか否か、及び介護の必要度(要介護度)を判定してもらいましょう。認定されると、申請日以降に利用したサービスについて給付が受けられます。
なお、要介護認定は一定期間ごとに見直しがあります。重度になったときは、期間の途中でも要介護度を変更してもらえます。
申請を行うと、市町村の職員、または市町村の委託をうけた施設や事業者の職員(介護支援専門員)が家庭を訪問し、心身の状況などの調査をします。調査には見栄を張ったりせずに正直にこたえましょう。その調査結果とかかりつけ医の意見書をもとに、保健・医療・福祉の専門家からなる審査会で判定し、その結果に基づいて通知がきます。

どんなサービスが受けられるの

要支援と要介護では、サービスメニューが同じでも内容が異なってきます。

要支援の場合は、生活機能の低下を防ぐことが大事なので、残存した機能をできるだけ活用し、またリハビリテーション機能改善を図る予防中心のサービスになります。
要介護の方は、重度化を防止し、生活機能の改善を図りながら、できるだけ「自立」した生活が送れるように支援するサービスを受けられます。
要介護者は、居宅サービスと施設サービスを受けることができますが、要支援者は、居宅サービスのみで施設入所はできません。

居宅サービスの例

【訪問サービス】

訪問介護(ホームヘルプ)
訪問入浴
訪問看護
訪問リハビリテーション
居宅療養管理指導(医師・薬剤師による訪問診察・訪問服薬指導など)

【通所サービス】

通所介護(デイサービス)
通所リハビリテーション(デイケア)

【短期入所サービス】

短期入所生活介護(ショートステイ)
短期入所療養介護(ショートステイ)

【その他】

福祉用具の貸与
特定福祉用具販売

施設サービスの例

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
介護老人保健施設(老人保健施設)
介護療養型医療施設

要介護認定の内訳は

実際の介護保険における要介護認定の内訳はどのくらいなのでしょう。古いデータではありますが、2004年に厚労省から発表された390万人のデータから要介護認定者の内訳をみてみましょう。これを見ると要介護1と要支援の認定者が約半数を占めていることがわかります。

すなわち、ある程度自分の意思で体が動かすことができる高齢者が多いことがわかります。
この場合介護保険のサービスメニューも、できるだけ自立して行動がとれるように、生活機能の低下の予防中心のものになっています。
現在、介護を受けていない方は、できればこの先も介護を受けずに生活したいとお考えでしょう。また、軽度要介護の方は、できる範囲で自立して生活していきたいとお考えのことでしょう。それでは、介護予防のためにはどんなことを心がけていけばいいでしょうか?

あなたの暮らしぶりはどうでしょうか。
介護予防の基本チェックをしてみましょう。

介護予防にはどうしたらいいか

介護予防が目指しているものは、体を動かすことに無理がなく、生活にいきがいをもって暮らせる生活です。そのためには、[運動プログラム][環境の整備][栄養・口腔機能][こころの健康]が特に重要です。
具体的に有効なものを考えていきましょう。

運動プログラムについて

筋力トレーニング有酸素運動が柱で、これらの運動を安全に実施するうえで欠かせないのがストレッチです。安全で効果的なトレーニングを行うためには、個人の特性(年齢、性別、障害、体力、活動量、体型など)を考慮した個別プログラムを継続することが必要です。

筋力トレーニングについて
筋力トレーニングは加齢などに伴う筋肉量の低下を抑制するために行います。自分の体重を負荷にして行う筋力トレーニングは、マシンを用いたトレーニングに比べて無理な負荷がかかりにくく、また自宅や職場などどこでも行えますので、取り組みやすいと思います。筋力トレーニングには、上半身を強化する種目と下半身を強化する種目がありますが、筋力トレーニングを初めて行うという方は、歩行に関連した大腰筋や太ももの筋肉など下半身の筋肉を強化する種目から行うとよいでしょう。種目や強度は体力に応じて設定し、効果を確認しながら行いましょう。筋力トレーニング中は、呼吸を止めて行うと血圧が上がりやすいため、息を吐きながら、反動をつけずにゆっくりと動かし、使っている筋肉に意識を向けながら行いましょう。

無理なくできる自分の体重を使った筋力トレーニング
(例)スクワット:大腰筋と下半身の筋肉を鍛えることができます。

(1) 両手を椅子の背に置き、肩幅に足を開き、背筋を伸ばして立つ。
  (2) 膝がつま先と同じ方向に曲がることを確認しながら、息を吐きながらゆっくりと膝を45度程度曲げる。
  (3) ゆっくりと元の姿勢に戻る。
     
     
     

注意点
1.呼吸を止めない
2.反動をつけずにゆっくり行う
3.使っている筋肉を意識する

環境の整備

年をとってくると自宅でちょっとしたことで転倒したり、つまずいたりします。平成13年の統計によると、1年間で8425人の高齢者が家庭内事故により死亡しています。入浴中の溺死が最も多く、そのほか同一平面上での転倒、階段からの転倒などがあります。自宅で転倒しないために、住まいの不便な状況を一度チェックしておきましょう。

ベッド周りや廊下には、つまずく原因になるものは置かないようにしましょう。布団の上や端を歩くのも足先が引っ掛かり転倒の原因になりますので注意してください。
トイレ、浴室などの水気はこまめに拭き取りましょう。
階段には手すりや滑り止めを取り付けると安全です。

てすり・段差・水回りなど不便ではありませんか?福祉の専門の方に相談してみるといいでしょう。

口腔ケア・栄養改善

「歯が痛い」「ものが食べにくい」「口が乾いて眠れない」「食事がまずい」などの症状はありませんか?歯科口腔内の状況をみてもらいましょう。
栄養状態に関しては、血清アルブミンが低下すると余命が短くなり、寝たきりのリスクが増し、肺炎の原因になるといわれています。健康診断で血清アルブミンが4.0g以下かチェックして下さい。体重の減少に気をつけて、バランスのよい食事、特にタンパク質を摂るようにしましょう。

こころの健康

高齢になると、退職など社会的役割が減る、病気や体力の衰えなどによる自信の喪失や親しい人との別れなど、老いに伴う喪失体験や生活環境の変化がきっかけとなり「うつ病」にかかることがあります。また、脳卒中の後遺症や、脳の小さな血管の変化が原因でおこる「うつ病」もあります。

主な体の不調

睡眠の障害(寝付きが悪い、夜中に何度も目が覚める、早く起きてしまいもう一度眠れない、十分眠った気がしない)
食べてもおいしくない、砂をかむような感じがするなど、食欲の低下、体重減少、わけもなく疲れた感じ、だるい

主なこころの不調

無気力、無関心、なにもかもが面倒
物事が決められない
認知症とよく似た症状(何度も同じ事を聞き返す、物忘れが増えるなど)
気分の落ち込みや不安感、いらいら感がある

このような症状がある時は医療機関に受診しましょう(早くみつけて早く直そう)。周りのサポートが大事です。何とかしたいと焦りますが、ゆったりと構えて結果を急がないようにしましょう。

最後に

誰でも、介護を受けずにいつまでも自立して生きていきたいと思っています。年をとっても、いきいきと生きがいをもって生活したいものです。「自分だけは別」と思わずに、日ごろから介護予防を心掛けていきましょう。また、ちょっと心配なことがある方、介護予防についてご相談など、あなたの健康のアドバイザー・薬剤師にどうぞご相談ください。

著者プロフィール


  株式会社 医療経営研究所
薬剤師 富永 敦子
NPO法人 ふぁるま・ねっと・みやぎ理事/(社)宮城県薬剤師会常任理事/
(社)日本薬剤師会編集委員/みやぎ21健康プラン推進協議会委員
1959年生   茨城県出身
1982年   東北大学薬学部卒業
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